おしるこさえ作れない。
今日、住んでいるシェアハウスのキッチンを整理していたら
あと数ヶ月で賞味期限が切れてしまう使いかけの小豆が出て来た。
「今日私が調理をしてあげないとこのまま捨てられてしまう」と、思ったと同時に先日住人の結婚式で配られずに余った大量のお餅の存在を思い出した。
「今日はおしるこを作ろう」
今日の私のタスクが決まった。
なんせ作ったことがないのでシェアハウスの住人で料理人の彼に
作り方を聞いたら『圧力鍋で一発だよ』と。
煮る時間も冷ます時間も彼のいう通りにして作ってみた。
3時間後。
美味しい香りを漂わせた圧力鍋の中には
とろけ出し、見た目はおしるこらしくなっているあずきの姿があった。
でも、私はもっと、とろとろのねっとりしたおしるこにしたかった。
おばあちゃんがよく作ってくれたあの「おしるこ」みたいな。
私は彼の『これくらいでいいんちゃうん?』という言葉を無視し、
さらに圧力鍋で煮込んだ。
30分後
鍋に近づいてみるとなんだか焦げ臭い…。
速攻で火を消し、ドキドキしながら圧力鍋を開けてみると
さっきよりもとろとろした姿のあずきがいた。
でも、焦げてる。
食べられないほどではないけど、美味しくない。
「私はおしるこさえ作れない。」
めちゃくちゃ悲しくて少し泣いた。
作れないのも悲しかったけれどそれ以上に
「あずきを美味しい姿に変えてあげられずに、まずくしてしまったこと」
がやるせなかった。
余り物のお餅を活かしてあげられなかったことも。
私はあずきとお餅を美味しく作ることで
今日の私を救える気がしていたんだけどな。
私は私自身のことも「あずき」みたいに現状よりもまずくしてしまうのか。
今の所の私は
「おしるこさえ作れない」
女なのだ。